1.わたしの子供になりなさい
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
涙を見せてはいけないと教えられたのね
そんなことない そんなことない そばに誰がいるのか次第
男には女より泣きたいことが多いから
あなたが泣くときは わたしは空を見よう
あなたが泣きやめば ふたりで空を見よう
もう愛だとか恋だとかむずかしく言わないで
わたしの子供になりなさい
もう愛だとか恋だとかむずかしく言わないで
わたしの子供になりなさい
誰にも誉めてはもらわない石の下の石
そんな日もあるそんな日もある 明日は明日のために来る
男は女には言わないことが多いから
疲れているのなら だまって抱いていよう
おそれているのなら いつまでも抱いていよう
もう愛だとか恋だとかむずかしく言わないで
わたしの子供になりなさい
もう愛だとか恋だとかむずかしく言わないで
わたしの子供になりなさい
もう愛だとか恋だとかむずかしく言わないで
わたしの子供になりなさい
もう愛だとか恋だとかむずかしく言わないで
わたしの子供になりなさい
2.下町の上、山の手の下
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
下町では彼女はとびっきりの上玉
しみったれた奴らなんかまっぴらの上玉
山の手ではあいつは見くだされた皮肉屋
気取り屋たちのゲームからこぼれた皮肉屋
似合いと意外は紙一重のめぐり会い
いちいち気に障るしたたかな組み合わせ
下町の上、山の手の下
下町の上、山の手の下
少しだけ油断をさせてくれ
思い出はすれ違う話せば話すほど
ケンカにもならないイライラの繰り返し
そして彼女は下町へあいつは山の手へ
帰りついて初めて荒野だと気がつく
下町の上、山の手の下
下町の上、山の手の下
もう一度油断をさせてくれ
下町から山の手へ電車は通わない
山の手から下町へ電車は通わない
けれど彼女は山の手へあいつは下町へ
気に障る相手のもとへと歩いてゆく
下町の上、山の手の下
下町の上、山の手の下
もう一度油断をさせてくれ
下町の上、山の手の下
下町の上、山の手の下
3.命の別名(わたしの子供になりなさい)
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
知らない言葉を覚えるたびに
僕らは大人に近くなる
けれど最後まで覚えられない
言葉もきっとある
何かの足しにもなれずに生きて
何にもなれずに消えて行く
僕がいることを喜ぶ人が
どこかにいてほしい
石よ樹よ水よ ささやかな者たちよ
僕と生きてくれ
くり返す哀しみを照らす 灯をかざせ
君にも僕にも すべての人にも
命に付く名前を「心」と呼ぶ
名もなき君にも 名もなき僕にも
たやすく涙を流せるならば
たやすく痛みもわかるだろう
けれども人には
笑顔のままで泣いてる時もある
石よ樹よ水よ 僕よりも
誰も傷つけぬ者たちよ
△くり返すあやまちを照らす 灯をかざせ
君にも僕にも すべての人にも
命に付く名前を「心」と呼ぶ
名もなき君にも 名もなき僕にも△
石よ樹よ水よ 僕よりも
誰も傷つけぬ者たちよ
(△くり返し)
命に付く名前を「心」と呼ぶ
名もなき君にも 名もなき僕にも
4.清流
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
なぜ競わなければいられないのでしょう
男と女は敵じゃないわ
なぜ夢中になることは弱みになるのでしょう
私あなたの敵じゃないわ
従えてもひれ伏させても 掌に心は入らない
私が味方だとわからない
流れよ清き流れよ はじめの気持ちを忘れても
流れよどちらからともなくまじわり合って流れてゆけ
世の中に争いは数限りなくある
勝ちと負けとで成り立ってる
だからといってあなたまで何に身構えるの
私があなたに何をするの
うやまわせておそれさせておかなけりゃ逃げると思ってる
私が味方だとわからない
流れよ清き流れよ はじめの滴を忘れても
流れよどちらからともなくまじわり合って流れてゆけ
流れよ清き流れよ はじめの滴を忘れても
流れよどちらからともなくまじわり合って流れてゆけ
5.私たちは春の中で
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
私たちは春の中で 淋しさに苛立っていた
通りすぎる春の中で 遅れることに怯えていた
もしも1人だったならば もしも孤独だったならば
もしも虚ろだったならば もしも自由だったならば
春はあやまちの源
私たちは春の中で 遅れることに怯えていた
私たちは春の中で わからないものに 苛立っている
通りすぎた春のために 失ったものを怯えている
もしも1人だったならば もしも孤独だったならば
もしも虚ろだったならば もしも自由だったならば
春はあやまちの源
私たちは春のために 失ったものを怯えている
もしも1人だったならば もしも孤独だったならば
もしも虚ろだったならば もしも自由だったならば
春はあやまちの源
私たちは春の中で 失くさないものまで失くしかけている
6.愛情物語
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
よりそいあって暮らすことが あなたのためにはならないこともある
しでかして来た過ぎた日々が 私を許しはしないらしい
今日までの愛情に報いて出来ることはただひとつ
突然の裏切りと見えるしかなくても
もう逢わない もう呼ばない あなたと他人になるわ
たとえ離れても心は変わらない
せつなさに疲れて息がとまっても
誰でもいい側にいてと 迷いにまかせたひと頃があった
忘れ捨ててほしいならと 忍び寄って来るあの頃の気配
狙うのは私だけでいい おびき寄せて遠ざかるわ
あなたには何者も触れさせはしないから
あなたには裏切りと憎まれてもいいから
たとえ離れても心は変わらない
せつなさに疲れて息がとまっても
狙うのは私だけでいい おびき寄せて遠ざかるわ
あなたには何者も触れさせはしないから
あなたには裏切りと憎まれてもいいから
たとえ離れても心は変わらない
せつなさに疲れて息がとまっても
7.You don't know
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
意味もない挨拶がわりのkiss
あなたには記憶にも残らない
私には眠れないひと晩
思い出は宝物になったの
期待なんかしないことと固く誓ったのに心乱れて
You don't know はるかに
You don't know どんなに
見つめてみてもあなたは気づきもしない
窓辺の花より値打ちがない
You don't know はるかに
You don't know どんなに
見つめてみてもあなたは気づきもしない
何も何も You don't know
この思い気づかれてはいけない
友達でいることさえなくなる
特別な素振りをしないために
特別に心は痛んでいる
誰でもない冗談さえ私のことかと怯えてしまう
You don't know はるかに
You don't know どんなに
見つめてみてもあなたは気づきもしない
窓辺の鳥より値打ちがない
You don't know はるかに
You don't know どんなに
見つめてみてもあなたは気づきもしない
何も何も You don't know
8.木曜の夜
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
木曜の夜11時半 まだ早すぎる何もないとあきらめるには
もしかしたらまだもしかしたらまだ
あなたが私をみつけてくれるかもしれないから
少しだけ目立ちそうな服を着ている
何回も振り返っては立ちどまっている
偶然なんてそんなにうまく起きないってことわかってるけど
こんなにこんなに人はいるのに どこにもどこにもあなたはいない
こんなにこんなに人はいるのに どこにもどこにもあなたはいない
次の角まで次の角まで 歩くほど遠ざかってるのかもしれない
でも早く歩いてしまう あなたの他の誰かに
誘いの声をかけられたくなんかないから
もしあなたの声だったらすぐにわかるよ
どんなに人と音楽が道にあふれても
どうしてるかな今ごろあなた 私のことは思ってないね
こんなにこんなに人はいるのに どこにもどこにもあなたはいない
こんなにこんなに人はいるのに どこにもどこにもあなたはいない
帰りたくない帰りたくない 混みあって歩きづらい街を歩いてる
帰りたくない帰りたくない みんな会いたい人に会えてよかったね
こんなにこんなに人はいるのに どこにもどこにもあなたはいない
こんなにこんなに人はいるのに どこにもどこにもあなたはいない
9.紅灯の海
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
けがれなき者よ この海に迷い込むな
幼き者よ この海に憧れるな
あてのない明日と しどけない過去の日々が
すれ違うための 束の間の海だ
櫂もなくして舵もなくして 浮かれ浮かれ身も世もなしに
足は千鳥となり果てて 遠い月夜を物語る
紅灯の海に漂い ひとつふたつの思い出を抱き
紅灯の海は優しい 海と名の付くものは優しい
かもめよかもめよ 真白き指先は
手招きするか 別れを告げるのか
忘れた素振りの 忘れえぬ面影が
灯台のようにひるがえる海だ
どこへ帰ろうどこへ帰ろう 浮かれ浮かれあてどもなしに
足は千鳥となり果てて 遠い月夜を物語る
紅灯の海に漂い ひとつふたつの思い出を抱き
紅灯の海は優しい 海と名の付くものは優しい
どこへ帰ろうどこへ帰ろう 浮かれ浮かれあてどもなしに
足は千鳥となり果てて 遠い月夜を物語る
紅灯の海に漂い ひとつふたつの思い出を抱き
紅灯の海は優しい 海と名の付くものは優しい
海と名の付くものは優しい
10.4. 2. 3.
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
食べていくための仕事にひと休みして 私はTVをつけた
眠らぬ旅のあれこれを 生まれた街で癒そうと試みていた
明日にはこの街にも雪がちらつくだろうと
季節はずれの天気予報が流れていた
明けきった5時半の空に 目を細めて チャンネルを変えた
中継という文字 そして私の瞳に爆風が噴きつけて来た
長い間に見慣れてしまっていた白く平たい石造りの建物から
朱色の炎と石くれが噴きあがる瞬間だった
ゆらゆらと熱のかげろうはあがり
やがて白い煙から土色の煙となって建物から噴き出していた
昨日までと今日は違うものなのだと
人はふいに思い知らされるのだね
蟻のように黒い人影が走り込む 身を潜める 這い進む 撃ち放つ
どうせTVの中のことだと考えることもできず 考えないわけにもいかず
ただ私は誰が何を伝えようとしているのか
それだけに耳を傾けた それだけに耳を傾けた
大きな救急車が扉を広く開けて待ち構え続けている
担架に乗り 肩にかつがれ 白い姿の人々が運び出される
日本人が救けられましたと 興奮したリポート
ディレクターの声もエンジニアの声もいり混じっている
人質が手を振っています元気そうです笑顔ですと
リポートは続けられている
その時ひとかたまりの黒い姿の人々が担架を囲んでとび出して来る
リポーターは日本人が手を振っていますとだけ嬉々として語り続ける
担架の上には黒く煤けた兵士
腕は担架からぶら下がり 足首がグラグラと揺れる
兵士の胸元に赤いしみが広がる
兵士の肩に彼の銃が ためらいがちに仲間によって載せられる
担架はそれきり全速力でいずこかへと運び出されてゆく
日本人が元気に手を振っていますとリポーターは興奮して伝え続ける
黒い蟻のようなあの1人の兵士のことは
ひと言も触れない ひと言も触れない
日本人の家族たちを喜ばせるためのリポートは 切れることなく続く
しかしあの兵士にも父も母も妻も子もあるのではなかったろうか
蟻のように真っ黒に煤けた彼にも 真っ黒に煤けた彼にも
あの国の人たちの正しさを ここにいる私は測り知れない
あの国の戦いの正しさを ここにいる私には測り知れない
しかし見知らぬ日本人の無事を喜ぶ心がある人たちが何故
救け出してくれた 見知らぬ人には心を払うことがないのだろう
この国は危い
何度でも同じあやまちを繰り返すだろう 平和を望むと言いながらも
日本と名の付いていないものにならば
いくらだって冷たくなれるのだろう
慌てた時に 人は正体を顕わすね
あの国の中で事件は終わり
私の中ではこの国への怖れが 黒い炎を噴きあげはじめた
4. 2. 3. …… 4. 2. 3. ……
日本人の人質は全員が無事
4. 2. 3. …… 4. 2. 3. ……
4. 2. 3. …… 4. 2. 3. ……
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